2010年12月10日金曜日

豊里友行の「沖縄便り」(6) 「沖縄へのウムイ(想い)広がれ!」 ・・・豊里友行

豊里友行の「沖縄便り」(6)
「沖縄へのウムイ(想い)広がれ!」
・・・豊里友行



1995年、米軍用地の強制使用手続きの代理署名拒否を決め、日米政府に立ち向かう当時の大田昌秀知事に僕はある種のヒーローのような思いを抱いていた。
繰り返される米兵犯罪に沖縄の民衆の怒りが臨界点に達し、8万5千人の県民総決起大会が行われ、まさに基地の島・沖縄から「日本の主権」を問うことになった。
1996年9月、県民投票で基地反対、縮小に賛成が過半数に達する。この県民の声をバックに大田知事はより強力に基地問題を問い詰めるはずであった。
だが、代理署名訴訟で闘い続けていた大田知事は、50億円の特別調整費と引き換えに代行応諾を表明した。
僕の中で一人のヒーロー像が崩れた。
同時に自らは傍観者になっている事にその時やっと気がつく。
時代に翻弄され、日米の国家に翻弄され続ける沖縄にあって僕は何ができるのか模索していた。
本当に基地の島・沖縄を変えるには日本国民一人一人が立ち上がるしかない。
私自身も沖縄から声を上げたい。
そう決意し私は本格的に写真を勉強し始めた。
鳩山由紀夫総理は2009年7月(選挙)で米軍普天間飛行場の移設は「国外・最低でも県外」と表明した。
そのため連日、「普天間」報道の嵐が吹き荒れた。
またしても私は基地の島・沖縄の現状を変革してくれるヒーローの誕生を期待してしまった。
ヒーローを奉り己自身は胡坐をかくのはもうよそう・・・・。

崩れても積上げて行く師走闇   友行

大手マスコミの流す膨大な情報の渦の前に私は、大きな幻影を見ているようだった。 
どっぷりと沖縄に浸かりながらも私は、沖縄から沖縄自体を問い続ける報道写真を発信しようと試みた。
私は5月決着に合わせて私の代表を務める出版社沖縄書房から『沖縄1999-2010 戦世・普天間・辺野古』豊里友行写真集( 840円)を千部緊急出版する。
写真展も開催した( http://naha.keizai.biz/headline/871/ )。
そして年内に『沖縄1999-2010 戦世・普天間・辺野古』豊里友行写真集(1050円)改定増版を増刷するために私は遁走している。
どうしても私は、沖縄に生まれ育った写真家で俳人としてこの普天間迷走に対して声を上げたかった。

今、ウチナーンチュ(沖縄の人)自身が自らの手でそして自らの言葉で沖縄を語り始めている。
私はそれらのウチナーンチュを写し取る鏡のような存在になろうと努め写真家として沖縄の声をこれからも発信し続ける。

沖縄中に張り巡らされたフェンスという国境が存在する。
その国境はとてつもない沖縄の米軍基地の過重な負担の象徴だ。
私は虐げている人間も虐げられる人間も同じ人間なのだから交流の中で理解し合えると信じる。
だがなかなか本土や世界に沖縄の人々の現状が見えてこない。
それは日本国民における沖縄の現状を無視するという沖縄差別でもあった。
私たちはアメリカの世界戦略における米軍基地とこの日本の合理的な傲慢な防衛力の不必要性を紐解いていかなくてはならない。

大きく重たい岩に例えられる米軍基地。
それも次第に私たち沖縄に連帯する日本人や世界の人々の沖縄への理解が増していく中で動き始めようとしている。
もう人を殺すことを仕事にしてきた軍隊を非武の島・琉球であった沖縄において必要としていないことを認めなければならない。
そのことから長い間目を背けてきたのが日本という国家であり、多くの日本国民でもある。
もう沖縄がこれまでに米軍基地によって虐げられた基地の歴史を世界中のどこの国においても行われてはならない。
日本国憲法違反の米軍基地を撤去・縮小していこう!
そのためにも今、日本国民一人一人が傍観者にならずに平和のために声を上げるべき転換期にある。
日本国憲法の平和主義を世界と連帯し、守り育てて行こう。
この沖縄から平和のウェーブを広げて行きたい。
それは国境を超え人種を超え地球上の同じ人間たちの愛の力によって証明できると私は信じて夢見続ける。



轟音の鼠となり空齧るフェンス   友行

宜野湾市に居座る普天間飛行場。民間の住宅に隣接した世界一危険な飛行場と言われている。



5 件のコメント:

  1. いつも情熱的でアツいですね。
    日本国民における沖縄の現状を無視するという「沖縄差別」は痛烈です。
    そう沖縄問題とひとくくりにして日本国全体の問題であるはずの防衛問題を沖縄問題、つまり沖縄の問題だと無視続ける「沖縄差別」がある。
    豊里友行さんは、『週刊金曜日』の連載「黙っていてははじまらない」で写真を担当されていて沖縄の現状を強く訴えてこられた。
    もう傍観者ではありませんよ。
    「今、日本国民一人一人が傍観者にならずに平和のために声を上げるべき転換期にある」と言われるように私たちも沖縄差別である米軍基地を解消すべき時がきているようです。
    このままでは軍事費の拡大によって日本は破産してしまいます!
    お互いがんばって日本全国的な米軍基地の撤去運動を盛り上げましょう。

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  2. 日本の誇るべき平和憲法・・・。
    憲法違反の米軍基地ですよね。
    日本はアメリカ追従の戦後65年です。
    沖縄差別というべきでしょうね。
    日本全国のどこも受け入れ拒否するであろう米軍基地。
    沖縄だけにかの大戦の悲劇の地に人殺しのための基地を置く無神経な日本国。
    アジア諸国において米軍基地の脅威を思うと中国や北朝鮮を刺激し続ける日米韓の演習・・・。
    私も米軍基地を無くすべきだと思います。
    武器を持って話合いのできる環境になるとは到底思えません。
    「もう沖縄がこれまでに米軍基地によって虐げられた基地の歴史を世界中のどこの国においても行われてはならない。」と宣言する豊里友行さんの夢が叶うように日本国民一人一人が沖縄のウムイ(想い)と沖縄へのウムイを持つべき時がきているようです。
    俳人も自分の生きている時代や環境に無神経なままではいけない。
    俳人たちは豊里友行俳句を社会性俳句とかひとくくりにするのではなく、時代に向き合うこの若き俳人の志を真摯に受け止めるべきだろう。

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  3. 菅直人首相が来県に対しての沖縄県民の抗議行動を取材中の豊里友行氏をお見受け致しました。『沖縄 1999-2010』豊里友行写真集改定増版が2010年内に発売するとのこと。今日の現場もページに載るのかな?沖縄民衆の叫びを捉えた840円の『沖縄1999-2010』豊里友行写真集は早くも大きな賞に推薦されているようですね。その改定増版もなんと1050円の激安とか。売れるといいですね。あなたの渾身の写真集が確かに沖縄の歴史を動かす道程になることを祈ります。沖縄県内外の人たちにも豊里友行氏がリンク先のめまぐるしい沖縄の歴史に抗う写真という杭を打ち込んでいることを知ってほしいです。

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  4. 840円の『沖縄1999-2010』豊里友行写真集を私も買いました。
    「とよチャンネル」によると林忠彦賞に推薦されているようですね。ぜひ入賞されて沖縄のウムイ(想い)をさらに多くの人の目に触れる機会を得れるといいですね。とても価値のある写真集だと思います。これからも応援致します。

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  5. 大城さま
    週刊金曜日の「黙っていてははじまらない」は、私の写真家デビューでした(笑)
    私は写真を通して沖縄の厳しい現状を少しでも伝えたい。
    俳句もまた写真による体験などを自由な創造性の翼を広げて行きたい。
    私は、みんなの力で沖縄の米軍基地を撤去する夢を見続ける。


    名嘉さま

    よく私の俳句は頭で考えて作られていると揶揄されたりもする。
    ですが沖縄戦の追体験や基地の現状を目の当たりにするたびに詩的フィルターを通して如何に表現するか閃きや推敲に苦心する。
    例えば野ざらしになった遺骨を目の当たりにし、どう表現するか創造性を重視しながら松尾芭蕉のように時間をかけて推敲したり閃きを大切にしたりする。
    写生俳句というか観察眼を常に磨きながら詩的空間の広がりの創造を試みる。
    現実の遺骨を造形しつつも星のさざなみや原野の彩りの鮮やかさを配合してみたりする。
    決して私の俳句は、頭で考え机上で出来上がる俳句ではありません。
    写俳というべきか写真の動かすことの出来ない現実もまた俳句と合わせて見ていただけると俳句の内容も深まるかもしれません。



    石川さま
    豊里の撮影現場を見られたとか(笑)
    最近はピント合わせに苦心しています。
    840円の『沖縄1999-2010』豊里友行写真集千部もあと僅か残すのみ。
    ですので思い切って1050円の『沖縄1999-2010』豊里友行写真集改定増補版も約千部刷ることにしました。
    印刷の手違いがあり来年一月初旬に販売開始となります。
    今回の改訂増版は書店を通さず豊里友行の行商と沖縄書房等の通販のみです。
    長いスパンで気長に売りたいと思います。
    これからもよろしくお願い致します。



    大西さま
    今年『東京ベクトル』が「さがみはら写真賞」に推薦された時一喜一憂し過ぎて・・・(泣)
    今度ご推薦をいただいた林忠彦賞も大きな賞です!
    これって三度目の正直かも?!
    一回目は1999年   MSF(国境なき医師団)フォトジャーナリスト賞 最終審査ノミネート!
    2回目は2010年のさがみはら写真賞推薦。
    そして三度目の正直(?)の林忠彦賞推薦。
    賞はショーでもあります(笑)
    今の私は、沖縄のウムイ(想い)を伝えるための写真集販売に専念するしかない。
    豊里友行の行商する写真集を買ってやってください。
    購入希望の方は下記のアドレスまでご連絡下さい。

    toyozato-tomoyuki@hotmail.co.jp
             

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