2010年9月25日土曜日

海程ディープ/兜太インパクト -1- 金子兜太のしゃべり方 ・・・中村晋

海程ディープ/兜太インパクト -1-
金子兜太のしゃべり方
・・・中村晋


句会に参加するようになって、金子兜太のしゃべり方には、かなり特徴があると思うようになった。

まずしゃべるスピードはかなりの高速である。よどむということがほとんどない。考えていることがすでに明確になっていて、論旨も明確。言葉の切れもよい。

声質は、やや高め。実は、この声質と出会ったとき、意外に思った。それまで写真で見ていた姿からして、もう少し低い声かと想像していたから。そして、その声にややかすれが入っている。どこかの噺家みたいな感じだ。

もちろんテレビでも見ていたことは見ていた。しかし、案外テレビというのは見ているようで見ていないものだ。肉声でなければ伝わらないものはある。声質というのもそのひとつだった。

話す内容は、まじめな俳句の話から下世話な話まで、硬軟自在だ。とくに下の方の話などは、ご婦人方が多数参加しているにもかかわらず、まったく動じる風もなく堂々と淡々としゃべる。句会で必ず一回はそんな話題になるのじゃないだろうか。ひょっとして、あえてその話を混ぜ込んでいるのではないかと勘ぐってみたりする。しゃべりのほとんどはアドリブだろうが、ここぞというところは、案外シナリオを作ってネタを考えているようにも見える。本当にそうだとすればかなりのエンターテイナーだ。

句会には、ちょっと遅れて登場する。そして、先生一言とマイクを差し出されると「えー、みなさん、どうもどうも」
やっぱり、どこか噺家みたいな雰囲気だ。そうそう、登場するときに会場から拍手がわき起こる。

あるときはっと、あ、これは志ん生だな、と思った。昭和の名噺家古今亭志ん生。
実際に高座を目にしたことはないけれど、学生の頃中古レコードを何枚か手に入れてじっくり聞き込んだことがある。古いビデオテープで「風呂敷」というネタを見たこともある。軽妙かつとぼけた味わい。天衣無縫に見えるけれど、実に計算された話芸。そしてさらりとわさびの効いた落ち。ちょっと高めでかすれ気味の声質。うん、志ん生だな、と納得した。きっと、若い頃金子兜太は寄席に通って、志ん生の高座を堪能していたに違いない。

とはいえ、これはもとより勝手な想像。でも、そんなふうに想像すると、なにか楽しい気分になる。そして実際金子兜太のしゃべりは人の心を高揚させ、愉快な気持ちにさせる。もちろん、句会で酷評されれば、その毒に当たってがっくりもする。しかし、それはそれ。まったく毒がない話なぞ、薬にもならない。

毒といって思い出した。金子兜太のしゃべり方って、ビートたけしにも似てると思うのだけれど、どうでしょう。

2 件のコメント:

  1. 金子兜太さん、一度テレビで拝見したことがあります。
    やはりあの感じで明朗な方なのですね。
    直にお話を聞いてみたいです。

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  2. るびいさん、コメントありがとうございます。そして、こんな拙文にコメントが来るなど予想していなかったので、返信遅れて申し訳ありませんでした。そうですね、やっぱり直に話を聞く、いわゆる謦咳に接するとまた違った印象になると思います。テレビでも、それはそれで金子兜太なのですが、生の兜太はまた存在感がありますよ。とても気さくで、温かい人柄です。ぜひ、何かの機会に直接話が聞けるといいですね。

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